コラーゲンは私たちの骨、筋肉、腱、歯、皮膚、血管、そのほかの器官や組織に存在するタンパク質です。コラーゲンは人体の総タンパク質の3分の1に相当するほど多量に存在しています。そして、私たちの身体にあるコラーゲンには1ダース以上の異型がありますが、コラーゲンの総量の90%を占めている沍^と。型コラーゲンが皮膚組織へ分布していると言われています。つまり、コラーゲンは私たちの肌にとって大切なものです。沍^と。型コラーゲンは線維構造をしています。皮膚組織に分布しているコラーゲンが正しい線維構造を維持していることが、私たちの美しい潤いある肌を保つためには極めて大切なことなのです。
(1) コラーゲンとビタミンCの関係
コラーゲンの最も特徴的な性質は、α鎖が3つのアミノ酸で1回転する左巻きの螺旋構造をとっており、この左巻き螺旋構造のペプチド鎖が3本右巻きに巻き合って、ロープ状の右巻き3本鎖構造の分子になっていることです。アミノ酸配列は独特で、3番目ごとのアミノ酸がグリシンであるので、コラーゲン分子の基本的な構造はGly-X-Yです。
1本鎖あたりのアミノ酸残基は1050であり、そのなかの1/3近くはグリシン(Gly)、15〜30%はプロリン(Pro)と4-ヒドロキシプロリン(Hyp)残基です。3-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリシン残基もありますが、その含有量は少ないと思われます。プロリン残基はプロリン水酸化酵素により4-ヒドロキシプロリンに変換されるわけですが( 図1 )、プロリン水酸化酵素を活性化するためにはビタミンCが必要とされています。そこで、ビタミンCが不足すると4-ヒドロキシプロリンの含有量が減少すると共に、生成されるコラーゲンは正しい線維構造をとることが出来なくなります。その結果として皮膚の障害が発生することになります。
さらに、ビタミンCはプロリン水酸化酵素の鉄を還元状態(Fe2+)に保つ働きがあります。また、コラーゲン中のリシン残基のC5もリシン水酸化酵素によってプロリンの場合と同じような反応機構でリシン残基を水酸化します。( 図1)
つまり、ここでもビタミンCは、コラーゲンの生成にとって大切な役割を果たしていることになります。この様な過程の中で、ヤマブシ茸は、強い抗酸化活性によって、私たちの肌にとって大切なコラーゲンの生成に重要な役割を果たすビタミンCを保護すると共に、様々な酵素の働きを助けるものと思われます。
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図1. プロコラーゲンのプロリンとリシン残基の水酸化 |
また、コラーゲンの螺旋は、5-ヒドロキシリシンでの架橋によって安定な線維構造や網状構造になります。ヒドロキシリシンは1〜2個の 糖分子(グルコース、ガラクトース、グルコシルガラクトースなど)がO結合型で結合する部位になっています。
このことは、糖を豊富に含んでいるヤマブシ茸が、コラーゲンの安定した線維構造を形成するために、非常に効率的に働くのではないか と考えられます。
一方、4-ヒドロキシプロリンの水酸基は水素結合によって、コラーゲンを安定化する役割も果たしていると思われます。
リシンとヒドロキシリシンから生じたε-アルデヒド基と別のリシンとヒドロキシリシンのε-アミノ基の間で架橋がなされます。リシン 残基をアリシル残基に変える酵素がリシルオキシダーゼです( 図2 )。この酵素反応によりリシンとヒドロキシリシンがアルデヒド型に なります。このようにして、アルデヒドが形成されると非酵素的に架橋が行われますが、その反応機構は解明されていません。
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図2. リシルオキシダーゼ反応 |
上記の様な流れでコラーゲンが生成されるわけですが、前述しました様に、ビタミンCはコラーゲン分子の水酸化反応に必要不可欠なものであり、コラーゲンの生成にとって極めて大切な働きをしているといえます。その過程で、ヤマブシ茸が何らかの形で大きな作用を果たしていると考えられます。
(2) ヤマブシ茸の作用
(ウ)抗酸化作用
ESRを用いてヤマブシ茸抽出エキスの活性酸素(スーパーオキサイドとヒドロキシラジカル)の消去活性の測定を行いました。スーパーオキサイドは生体内にスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)という分解酵素がありますが、年齢とともに活性は弱くなると思われます。また、ヒドロキシラジカルはとても反応性が高くDNAやタンパク質、脂質などに直接攻撃し損傷を与え、さまざまな疾患を引き起こすと考えられています。この活性酸素は、スーパーオキサイドがSODにより分解された過酸化水素(H2O2)と2価の鉄イオンが反応した時に発生したり、体の約70%は水(H2O)が占めていますが、放射線(X線など)をあびると水が分解されヒドロキシラジカルを発生します。さらにこのヒドロキシラジカルは生体内に分解する酵素が存在しません.つまり、ヒドロキシラジカルが発生した場合、生体内には保護する酵素がないということです。そこでスーパーオキサイドとヒドロキシラジカルの消去活性が強い抗酸化物質で補うことで、生体内の活性酸素を取り除き病気や老化の予防に働くと考えられています。
ヤマブシ茸抽出物のESR(electron spin resonance)装置での測定結果は、SOD様値(スーパーオキサイドの消去活性)が7.4×103 u/g、DMSO様値(ヒドロキシラジカルの消去活性)が5.7×10 mol/gととても高い数値が得られました。これはヤマブシ茸が生体内の活性酸素を取り除く力が強く、病気や老化の予防に有効的だと云うことを示しています。
(エ)主要構成糖のアラビノースの作用
キノコ類に特徴的な糖の一つとしてβ―グルカンなどがありますが、今回の実験でアガリクスの主要な構成糖はマンノース、ヤマブシ茸は現在非常に高価であるアラビノースであることがわかりました。アラビノースは単糖の中でも還元力が高いことから、抗酸化物質として皮膚の老化予防に働いていると考えられます。
これら以外にも、アラビノースは小腸の砂糖分解酵素であるスクラーゼの働きを阻害することで砂糖の体内への吸収を抑え、血糖値の上昇を抑える働きがあることが知られています。
また、ヤマブシ茸の糖質がヤマブシ茸と生体内のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの抗酸化酵素を保護しているとも考えられています。
(3) (1)+(2)の相互作用
以前から、コラーゲンやビタミンCが肌の健康のためによいことは広く知られておりますが、最近、ヤマブシ茸を食べると肌がきれいに なると言うことが、本などで紹介されるようになりました。そこで、どうしてヤマブシ茸が肌のためによいのかという研究が進められてい ます。
現時点では科学的に実証はされていませんが、(1)+(2)で説明しましたヤマブシ茸、コラーゲンとビタミンCの個々の作用が働くこ とで老化の予防に役立っているということは確かです。また、これらがもたらす相乗効果についても注目されており、現在、これらの相乗 効果については科学的な検証が進められています。
以上